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Si Può Fare... Amigo やれるぞ、アミーゴ

イタリア映画 (1972)

マカロニ・ウェスタンで少年の出て来る映画は、以前紹介した『Sella d'argento(シルバー・サドル/新・復讐の用心棒)』(1978)と、この映画ぐらいしか思い当たらない。両方とも、出て来るのは、イタリアの子役では珍しい金髪の少年で、役回りはお金持ち。そうでもなければ、小さな子供がマカロニ・ウェスタンに出て来られる訳がない。そして、『シルバー・サドル』では、マカロニ・ウェスタン定番のジュリアーノ・ジェンマが出演していたが、この映画では、マカロニ・ウェスタン専門のバッド・スペンサー(Bud Spencer)(1929-2016)と、西部劇そのものが珍しいアメリカの有名俳優ジャック・パランス(Jack Palance)(1919-2006)の2人が映画を締めている。レナート・チェスティエが演じるチップは、東部出身の金持ちの息子だが、両親を含めた親戚一同が伯父1人を残して死んでしまい、伯父は甥を金持ちにするため、所有権のある土地・家屋を目指して西部の荒野まで馬車でやってきた。スペンサーが演じるカボンは、拳銃を持たない代わりに、信じられないほど腕っぷしの強い重量級の闘士。パランスが演じるソニーは、抜群の腕前のガンマンだが、4人の踊り子を連れて、各町の酒場を回ることで生計を立てている。この2人の間には、確執があり、その理由は、ソニーの妹のメアリーが、カボンによって偶然一夜を共にする関係になり、それを恥と思うソニーは、カボンを妹を結婚させて面目を果たし、その直後にカボンを殺そうと決意している。そこに、ある意味割って入ったのが小さなチップ。チップの機転でカボンがリンチから救われたこともあり、チップの伯父か死ぬと、カボンは、伯父に頼まれた家にチップを連れて行く。しかし、その町には、どこかに石油があるという噂があり、悪知恵で保管官になった男と、石油探しにやってきた流れ者の間で、チップの家は争奪戦の対象となる。そこに、カボンとソニーと妹のメアリーが絡み、カボンの剛腕とソニーの射撃の天才ぶりが目を楽しませてくれる。マカロニ・ウェスタンとしてはB級かもしれないが、『メリーゴーランド』のレナート・チェスティエが3番目に重要な役として出演する日本未公開の映画として価値がある。問題は、ちゃんとした字幕はイタリア語字幕しか存在しないこと。ところどころ意味不明の箇所はあったが、正確かつ それらしい調子での意訳にはなっていると思う。

並外れて体が強健なカボンが、荒野の真ん中で乗っていた馬が弱ってしまい、途中で放置されている馬の一群を見つけ、これ幸いと頂戴すると、そこに本来の所有者と手下が現われ、カボンの首にロープをかけ、縛り首にしようとする。カボンは、理不尽な敵に対しては容赦なく攻撃するが、自分の首が吊られようとしているのに、なすがままにされる〔自分の方が悪いので戦わないが、命がかかっているので、どうみても不自然〕。そこに通りがかったチップと伯父を乗せた馬車。伯父は法の判決を受けないリンチは違法だと言い、相手に弁護士かと問われると、すかさずチップがそうだと嘘を付き、結果としてカボンはリンチを免れ、裁判まで牢に入れられる。牢の “先客”、地元の悪漢どものボスが 豪華な差し入れを食べていたので、カボンは、いつも勝っている賭けクイズを出し、負けた場合の条件を出さずに勝ち、食事を奪って食べ始める。相手は、不正な賭けなので返せと脅し、カボンにノックアウトされる〔カボンはインチキを嫌う男なので、何となく不自然〕。そこに、ボスの手下から牢屋の壁を爆破するとの声がかかり、カボンは、それを利用して、まんまと逃げ出す。再び荒野に出て行ったカボンは、そこで死の直前の “チップの伯父” に会い、不動産の所有証明書とともに、チップを託される。カボンは、前日に助けてもらった恩もあるので、チップの家のある “それほど離れていない” 町まで連れて行くことにする。町には、最初は分からないが、極めて悪質な保安官がいて、昨夜 別の町の牢にいたボスとつるんで町を支配していた。そこに現れたカボンは、チップが昔もらった少額のお金を銀行に預けようとして銀行を襲った悪漢どもと銃なしで戦い、完全にやっつけるが、銀行の建物も目茶目茶にし、迷惑がられる。その後、向かった郊外にあるチップが所有者になった家は、大きな井戸を持つ、傷んだ大きな家。根は優しいカボンは、馬車から重い荷物を家に運び入れ、家の壊れた箇所も直してやる。そこに、保安官の手下2人が現われ、不動産証明書を破り捨てて出て行けと言ったため、カボンは2人を直ちにやっつけるが、町の不正な雰囲気が顕わになる。そして、保安官が牧師の姿で家に現われ、家を千ドルで買うと申し出るが、カボンとチップはこの家に何か知られざる価値があると知り、申し出を断る。一方、カボンは、ソニーという酒場の踊り子達を連れてあちこちの町の酒場を回っている男に、追われてもいた。それは、カボンが、好きな踊り子と間違えて、ソニーの妹に手を付けてしまったので、ソニーは、妹の名誉回復のために、カボンと妹を結婚させた後、復讐のためカボンを殺そうとしていたから。そのソニーと保安官&牧師が出逢い、2人は同意に達する〔牧師なら結婚させられる。ソビーはカボンを殺し、家は牧師の物になる〕。そして、保安官&牧師は、カボンを力ずくで〔銃で脅してロープで縛り上げ〕教会に連れ行き、ソニーの妹と結婚させる。式が終わり、ソニーがカボンを殺そうとすると、チップは、カボンが好きな妹に、カボンの子を妊娠していると言わせ、それを真に受け取ったソニーは、“甥の父親” を殺すのを断念する。約束が守られなかったことに怒った保安官&牧師は、地元の悪漢どものボスを呼びつけ、チップの家の外で行われていた結婚祝いのパーティを総勢20名で襲わせるが、酒場で行われたその密談を聞いたソニーの踊り子たちが、酒場に預けてあった銃をすべて使い物にならなくしておいたので、戦いは、カボンが得意の肉弾戦になり、戦いは勝利。副産物として、井戸が爆発し、中から石油がほとばしる。これで、チップは、億万長者となり、カボンとソニーの妹夫婦も、そこでチップと一緒に暮らす(恐らく)。

チップ役は、レナート・チェスティエ(Renato Cestiè)。1963年1月11日生まれ。かなり前、“お涙頂戴” の有名作『L'ultima neve di primavera(メリーゴーランド)』(1973)の紹介の際、「映画初出演となった コメディ風マカロニ・ウェスタンの『Si può fare... amigo』(1972)で、いきなり重要な脇役を任された」と書いたが、それがこの映画。『メリーゴーランド』の紹介は2020年7月。この映画のDVDをイタリア・アマゾンから購入したのは、その2年前の2018年5月。購入は結構新しいのに、DVDの画質は1972年の映画らしく古く、ぼけていて、今回紹介するまで中身を観ることはなかった。レナートは、『メリーゴーランド』に比べ、より幼く、経験が乏しく、内容も場所も20世紀とは全くちがっているので、笑顔はワン・パターン。紹介に当たっては、なるべく多様な表情を選んだつもりだが、西部劇のせいか顔が全体に小さく、選定に苦労した。

あらすじ

荒野の真ん中で、一匹狼的な男カボンの乗った白馬が倒れてしまう。カボンは、馬を立ち上がらせようと言葉を尽くすが、何を言っても効果がない。しかし、荒野を見下ろす崖の上に1台の馬車が止まると、カボンは、「ソニーだ。あいつは、脳ミソの代わりに銃を持ってるぞ」と言うと、馬は起き上がる。「やっぱりな。お前には、恐怖が一番よく効く」。馬は弱っているので、カボンは馬には乗らず、一緒に歩いて行く(1枚目の写真、矢印はソニー)。それを、ソニーがじっと見ている(2枚目の写真、矢印はカボン)。


しばらく歩くと、馬はカボンを乗せられるまでに回復する。そして、さらに進むと、今度は、行く手に7頭の馬がいる。カボンは、7頭とも頂戴し、白馬は弱っているので、別の馬に乗っていくと、目の前に4人の男が現われる。そして、首領が、「馬泥棒がどうなるか知ってるな?」と問い質す。カボンは 「俺のせいじゃない。こいつらがロンフォン〔カボンの白い馬〕に恋をしたんだ」と弁解する。「しゃれの上手い泥棒だな」。「ご親切に」。「ロープを持って来い。1本でいい。急げ」。「木なんかないぞ」。「大事なのは、首があることだ。あとは、何とでもなる」。そこに、1台の馬車がやって来る。幌の中は、新天地への引っ越し用の荷物が山積みになっていて、御者席には、都会の老人と少年が乗っている。前方で起きていること気付いた少年(チップ)は、「見て、伯父さん」と腕を持つ(2枚目の写真)。そこでは、カボンの首にロープが掛けられ、そこから長いロープが伸びていて、如何にも首吊りされる直前だ(3枚目の写真、矢印はロープ)。カボンは崖っぷちまで連れて行かれる。ロープの反対側は、馬の鞍に縛り付けられている。



そこに、チップと伯父の馬車がやって来たので、全員が振り向く。チップは、「その人、何をしたの?」と訊く。「俺の馬を盗んだ」(1枚目の写真)。伯父は、「そんなことでか? 子供の前で、キリスト教徒を吊るすなんて許されん」と異論を述べる。「誰が、ここにいてくれと頼んだ。あっちに行けよ」。チップ:「あんた、保安官じゃないよ。そうじゃなければ、こんなことできないよ」(2枚目の写真)。伯父:「あんたが法の代理人でないなら、あんたは殺人を犯すことになる。裁判の便益を受けとらんじゃないか」。カボンは、さっそく、「弁護士さんが正しい」と言い(3枚目の写真)、男は、「あんた弁護士かい?」と訊く。チップは、「もちろん。第一級だよ」(4枚目の写真)〔伯父は弁護士ではないので、この嘘に目を剥く〕。それを聞いた以上、リンチができなくなったので、男は、「最初に裁判にかける。吊るすのは それからだ」と妥協し、それを聞いたチップは笑顔になる(5枚目の写真)。





カボンは牢に入れられる。そこには先客がいて、その男〔強盗団の親分〕は、豪華な夕食を手掴みで食べている。それを見たカボンは、「何て牢だ。七面鳥や栗、ポテトチップスまで、差し入れを許してる」と驚く。カボンは置いてあった金属製の筒状のコップを手に取ると、食べるのを中断した男に、「この丸い部分と 真っ直ぐの部分が見えるかな? どっちが長いと思う?」と訊く(1枚目の写真、矢印)。男は、「このアホが。真っ直ぐの方に決まってるじゃねぇか」と言う。カボンは、「七面鳥を賭けないか?」と訊く。「いいぞ」。カボンは、ポケットから紐を取り出すと、まず、紐で筒のまわりを一周させ、その点を筒の先端に当て、紐を筒の端の方に伸ばし、筒の長さの方が短いことをはっきり見せつける(2枚目の写真)〔周長はπ(パイ)×直径なので、余程のことがない限り、周長の方が長い〕。カボンは、「あんたは負けた」と言うと、料理の入った大きな金属製の皿を取り上げると、自分の前に置き、食べ始める(3枚目の写真、矢印)。



男は 「俺が勝ってたら、どうなってたんだ?」と 一方的な賭けに文句をつける。カボンは、「七面鳥だよ」と言うが、これは理屈に合わない。男は 「待て待て、七面鳥は元々 俺の物だったんだ。すぐ返せ」とイチャモン。カボンが断ると、男は立ち上がり、テーブルの上に置いてあったビール瓶を取ると、それでカボンの頭を殴る(1枚目の写真)。しかし、体中が鉄の塊でできているようなカボンは、びくともしない。悠然と眼鏡をはめると、ゆっくりと立ち上がり、男の頭を真上から一発叩くと、男は、気を失ってそのまま壁に倒れ込む(2枚目の写真)。カボンは眼鏡をしまうと、七面鳥にかぶりつく。すると、牢の外から、「ジェームズ、聞こえますか?」という声が聞こえる。「誰だ?」。「俺たちです。今すぐ壁から離れて!」。カボンは、悠長に食べながら立ち上がり、壁に倒れたままのジェームズを反対側に引きずるって来て食べていると、壁が爆破される。手下が大勢入って来たので、カボンは、「ここで、うたた寝しとる」と言うと、穴から外に逃げ出す(3枚目の写真)。警報の鐘が鳴り、手下達はジェームズを何とか馬に乗せると、逃げて行き、保安官がそれを追う。



カボンが、白馬に乗って立ち去ろうとすると、吊るし首にしようとした男が 銃を構えて出て来ると(1枚目の写真、矢印)、「もう、訴訟の手続きは済んだ。お前のような泥棒には、急いでやらないとな」と言う。すると、向かい側の旅籠の2階から、「ちょい待った。俺なら そんなことはやめとくな」と、ソニーが声をかける。「俺が止められるか?」。その瞬間、早打ちの名人のソニーが銃を撃ち、男の手から銃を弾き飛ばす。そして、「悪いな。そこにいる豚には、生きててもらわんと困るんだ」と、わざとらしく謝る。すると、後ろの窓が開き、嬉しそうな顔の女性が、「カボン!」と何度も叫ぶ(2枚目の写真、後ろの女性はソニーの妹メアリー)。カボンは、それを無視して、さっさと逃げて行く。カボンは、メアリーに「心配せんでいい。遠くまではいかん」と言って 静かにさせる。


カボンが、白馬と話しながらゆっくりと進んでいると、突然銃声が響き渡る。カボンは、すぐに岩陰に隠れたが、銃を持った手が岩陰で振られ、敵意のないことを示したので、用心しながら近づいて行く。すると 「助けて」という小さな声が聞こえる。「来て。怖がらないで。私は死ぬ」。カボンが姿を見せると、それは、さっき自分を救ってくれた “弁護士” だった。彼は 「あなたは泥棒ですか? 私は何もしません。あなたの注意を引くために発砲したのです」と言うと、指で近くに寄るよう指示し、「聞いて。あなたを信用しています。私は83歳で、心臓が… 発作を…」と弱々しく言うと、「この書類を取って下さい」と、紙を差し出す(1枚目の写真、矢印は書類と、合図のために撃った銃)。カボンが、書類を受け取ると、「あっちに、私の甥っ子のチップがいます。私の心臓はもうもちません。どうか、この書類をチップに渡して下さい。そして、どうか、あの子をウエストランドまで連れて行って下さい」と、息絶え絶えに頼む。「そこに鉄道はあるかな?」。「はい、2つ」。「じゃあ、気楽に休んでるがいい」。その言葉と時を同じくして、老人は息を引き取る。カボンは馬車まで行き、「お前さんの伯父さんが言ったこと知ってるか? 俺が伯父さんの代わりにウエストランドまで連れて行くんだ」と話す。「伯父さん、死んじゃったの?」。「ある意味では… まあ、落ち着いて」。「僕には16人の伯父さんがいて、あの人が最後だったんだ」(2枚目の写真)「僕、一人ぼっちになっちゃった。どうすればいいの?」。「俺が一緒にいて、お前さんをウエストランドまで連れて行ってやる」。そう言うと、チップを軽々と抱き上げ、白馬を予備の馬として馬車の後ろに繋ぎ、そのまま2人で御者席に乗り込む。そして、周りにソニーの馬車がいないかどうか確かめる(3枚目の写真)。それを見たチップは、小型の望遠鏡を取り出す。「何か、見えるか?」。「醜い顔の男が見えるよ。ピカピカの銃を持ってる」。それを聞いたカボンは、望遠鏡を借りて見てみる。「追いかけられてるの? 逃げてるの?」。「バカなこと言うんじゃない」。そのソニーの幌馬車に乗っているのは妹だけではない。幌に「SONNY’S GIRLS」と書いてあるように、訪れる町の酒場で歌って踊る若い女性達を4人も乗せている。



夕方になり、カボンは焚き火を作り、どこかで調達してきた鶏肉を木の枝に刺して焼く。チップは、「あのね、僕の伯父さん 弁護士じゃなかったんだ」と打ち明ける(1枚目の写真)。「何が言いたいんだ? お前さんが俺の命を救ったってか?」。「それと何か関係があるの? あなたがいい人だから、吊るそうとしたんじゃないでしょ? でも、あなたを追って来る方も悪いよね? どうして追いかけてるの?」。カボンは急に不機嫌になり、答えるのを拒み、2本ある木の枝の1本をチップに渡す。チップはフォークを要求するが、カボンが枝から齧っているのを見ると、真似をして食べる。カボンは、木の水筒から酒(?)を飲み始めると、銃声が近くで聞こえ、そこにソニーが現われる(2枚目の写真)。「動くな」。「動きゃしないよ。残りを食べてもいいか?」。ソニーは水筒を足で蹴飛ばし、銃を突き付ける。カボンは、立ち上がると、「チップ、約束を守れなくなった」と言う。ソニー:「このチビ助は何だ?」。カボン:「俺の弁護士の甥だ」。そして、カボンが歩いて行こうとすると、ソニーが 「止まれ。動くな」と言う。カボン:「子供の前で、人を殺すのは止めろ」。ここで、チップが口を挟む。「非武装の人を殺すことなんかできない。そんなこと絶対許されないよ」(3枚目の写真、矢印は焼肉)。



ソニーは、「心配するな。今は殺さん」とチップに言う。そして、カボンに、「お前には、まず、俺の妹のメアリーと結婚してもらう」と言う。「俺は誰とも結婚せん。以上だ。あっちへ行くぞ」〔あっちで殺せ、ということ〕。「そんなことは許さん。もし、俺がお前を今殺したら、メアリーは 恥と不名誉の中で残りの人生を送らにゃならん。だが、結婚式の後で殺せば、恥じることのない未亡人になれる」(1枚目の写真)。「お前の妹なんかに、指一本触れたことないぞ」。「この嘘つきめ。親戚の奴らは逆を信じとるから、そっちが正しい。だから、まず結婚させ、それから殺す」。ここで、またチップが口を挟む。「なら、百年生きられるよ。簡単じゃない。結婚しなきゃいいんだ」(2枚目の写真)。カボンは、「そりゃそうだ。俺の弁護士の甥が言ったの聞いたろ?」。ソニーは、近くに生えていた木の枝を銃で次々と吹っ飛ばしてみせ、「両腕がなくたって、両脚がなくたって、頭さえあれば構うもんか」と脅すと、結婚許可証を出して見せ、「牧師を探しにいかんとな」と嬉しそうに言う。ここで、カボンは、また眼鏡をかけると、「見せてみらえるかな?」と訊く。ソニーが 「俺はバカじゃない。破るつもりだろ」と、書類に100%気が行って、銃を忘れていると、カボンの腕がソニーの首を激しく叩き、ソニーはその場で気を失う。「じゃあ、チップ、行こうか」。2人は、首が40度捻じれてしまったソニーを置いて、去って行く。



馬車をゆっくりと走らせながら、カボンは、チップに 「お前さんの伯父さんは、なんでこんな荒れ地に連れて行こうとしたのか、説明できるか?」と訊く。「伯父さんは、簡単に大金を稼げるって」(1枚目の写真)。「ここじゃ、ネズミだって 何も見つけられん」。「伯父さんは間違ってないし、僕は ここ好きだよ」。「好きなら、ここでずっと暮らすんだな。俺はすぐ汽車でおさらばする」。馬車はウエストランドの町に入って行く。すると、そこに牧師の服の上から保安官のバッジの付いた上着をはおった男が、部下2人を連れて現われ、「主はあなたたちと共に。我らが小さく平和な共同体にようこそ」と言う(2枚目の写真)。「ここに長く滞在される予定かな?」。「いやいや、俺がするのは たった一つのことだけ。それが済んだら、すぐ立ち去るよ」〔チップのことは何も言わない〕。「なら、安心して行きなさい。主があなた方を見捨てないように」。そう言い残して、3人は町から出て行く。


すると、町中が慌ただしくなり、通りに出ていた人々が急いで家に入り、戸締りを始める。カボンは、「あいつら、何してるんだ?」と不思議がる(1枚目の写真)。カボンは馬車を停めると、床屋の前で地面をスコップで掘っていた男に、「おい、何が起きてる?」と訊く。「保安官が遠乗りに出かけた」。「それがどうした?」。「俺は、ここの住民じゃない。だけど、保安官がいなくなると、面倒なことが起きるんだ」。そう言うと、男は、掘った土を口に入れる。それを見たカボンは 「あんた、何やってるんだ?」と訊く。「土を食べるんだ。見りゃ分かるだろ?」(2枚目の写真、矢印)。


カボンが、チップの伯父から託された封筒を見てみると、中には、書類の他にお札が入っている。「これは?」。「僕の最初の聖体拝領〔カトリック〕の時、パティ伯母さんがくれた50ドルだよ」〔西部に鉄道が敷設された中心的な年代は1880年代なので、その時点での50ドルは、プーチンによる無謀なウクライナ侵略前の2020年の時点での約1270ドル〕。カボンは、「お前さんのポケットに入れてくのは危険だから、すぐに銀行に預けよう。そこで待ってるんだ」と言うと、銀行に向かう(1枚目の写真、矢印は封筒と、強盗団)。カボンが銀行に入って行くと、2人しかいない行員の、支店長が「閉店しました」と言う。「俺は、この金を、どこか安全なとこに預けたいだけだ」。「急いで下さい。預金者のお名前は?」。字の読めないカボンは、手紙を渡し、何が書いてあるか教えてくれと頼む(2枚目の写真)。その紙は、町から2マイル離れた場所にある “井戸の家” の所有権と、灌漑のための水利権の保証書で、権利の所有者はチップ・アンダーソン。これで、預金者の名前も確定した。ところが、その時、強盗団が銀行に入って来て、手を上げろと言う(3枚目の写真)。



ピンクの布で顔を隠したボス〔ジェームズ〕は、カボンを見て、「俺たち、どこかで会ったことないか?」と訊くが、カボンは 「覆面だから分からんよ」と答え、ジェームズが布を外すと、牢の中が暗かったせいか、「会ったことはないね」と言う。ボスは銀行から出て行く、手下が、金庫の中からお札を奪い取る。そして、カボンのお金まで盗ろうとすると、「これは、俺の金だ」と言って渡すのを拒否する。相手は、それを奪い取る(1枚目の写真、矢印)。「金だっただろ、でぶっちょ」。カボンは、「あんたらは、好きなだけ銀行の金を奪っても構わん、だが、これは駄目だ」と言い、お金を奪い返す。「これは銀行の金じゃない。俺のだ」。相手が、もう一度お金を奪うと、カボンは、ゆっくりと眼鏡をかける。そして、お金を奪い返すと、殴りかかった相手の腕を掴んで投げ飛ばし、その寸前に奪った相手の拳銃を、他の強盗に向け(2枚目の写真)〔カボンは銃を持っていない〕、武装解除する。カボンは、「この銀行は、あまり安全じゃないようだ」と言うと、お金と書類をポケットに入れ、拳銃を店長に投げて渡す。拳銃がなくなったので、行内にいた強盗達が襲いかかるが、カボンは、抜群の腕力で全員をやっつけるが(3枚目の写真)〔4枚目の写真は、3枚目の強盗を見て喜ぶチップ〕、銀行内の建具も滅茶苦茶に破壊されてしまう。店長は、「これは単純な強盗でした。なのに、あなたは、我が行を目茶目茶に破壊してしまった」と責める。カボンが、謝って銀行を出て行くと、そこには、銃を持った4人が待ち構えていた。しかし、そこにソニーの銃弾が飛んで来て、4人の拳銃が吹き飛ばされる。ソニーの首は曲がったままで、その恨みを口にするが、メアリーが「カボン!」と叫んで馬車から降りて来たので、カボンは走ってチップの馬車に戻る。ソニーはメアリーを呼んで御者席に上がらせ、医者を探すように命じる。カボンは “井戸の家” に向かって逃げる。




2人を乗せた馬車は “井戸の家” に着く(1枚目の写真)。確かに、大きな井戸が家の前にある〔家は大きいが荒れていて、周辺は乾燥地帯で灌漑農業ができるような環境にはない〕。カボンは 「何だ、これ」と言い、チップは 「気に入らないの?」と笑顔で訊く(2枚目の写真)。カボンは馬車から降りると、チップを助け降ろし、2人で井戸に向かう。そして、「これが灌漑用の水かな?」と言い、ロープに付いた桶を落とすと、ザブンと音がする。チップは 「伯父さんは、ここに住むようにって。だから、僕は、灌漑でひともうけするんだ」(3枚目の写真)。しかし、引っ張り上げた桶の中には、水と一緒に臭い泥が一杯入っている。



それにがっかりしたところに、さっき、保安官と一緒にいた2人の部下が姿を現わし、「おい、お前たち、ここから出ていけ」と言う。そうした物言いには すぐ腹を立てるカボンは、「どこからだ?」と訊く。「私有地からだ」。「問題ない。この子が、所有者だ」。「いいや、彼は死んだ。ここは、町が所有してる」。「それは違う。この子が所有者だ」と言うと、書類を渡す。書類を渡された男は、読みもせずに、破り捨てる(1枚目の写真、矢印)。チップは、「僕の書類だ。何てことするんだ」と言うと、地面に散らばった紙片を拾い始める(2枚目の写真、矢印)。カボンは、眼鏡をかけると、「あの子は正しい。引き裂く前に読むべきだった」と抗議する。2人が拳銃を取り出すと、その素早さに感心したフリをして、それを自分の両手でやって見せ、次の瞬間、その両手を2人の頭に持って行き、2人の頭を挟んで叩きつける(3枚目の写真)。カボンは、チップに2人の銃を回収させ、それを受け取ると、井戸に放り込む。そして、2人を追い払う。眼鏡をまだ外していないカボンに、チップは 「それ、どのくらいの度数?」と訊く。「何が?」。「ぼけるから、かけてるんでしょ?」。「目はよく見えるぞ」。「なら、なぜ眼鏡かけてるの?」(4枚目の写真、矢印は眼鏡)。「考えるのに便利だ」。その答えで、チップが満足したとは思えないが、取り敢えず、「馬車から荷物を降ろすの、手伝ってもらえない?」と頼む。気のいいカボンは、「ソニーの奴は首が曲がってるから、出発は明日でもいいか」と言って、手伝うことにする〔チップ一人では絶対に無理〕




ソニーは旅籠に入り、メアリーが呼んできた医者が、ソニーの首を捻って元通りにする(1枚目の写真、矢印の方向に捻る)。一方、“井戸の家” の中では、傾いている 如何にも重そうな梁を カボンが肩に乗せて持ち上げている(2枚目の写真)。それを間近で見ていたチップは、「あなたとバッファロー、どっちが強いの?」と、変な質問をする。「バッファロー 見たことあるのか?」。「ううん。でも、きっと あなたの方がずっと強いよね?」(3枚目の写真)。このあと、チップは余分なことを言い始める。「あのね、僕、あの人、素敵だと思うんだ」。カボンは重い箱を床から持ち上げて、テーブルの上に置く。「誰だい?」。「あなたの彼女」。「俺には、彼女なんかいない」。「じゃあ、なぜ あの女の人 あなたが好きなの?」(4枚目の写真)。「『なぜ』なんか止めるんだ。でないと、こんなこと止めて、出て行くぞ」。「ごめんなさい」。




そこに、牧師の服だけになった保安官が入って来る。カボンは、前会った時、牧師の服には気付かなかったので、「あんた、保安官じゃなかったかね?」と訊く。「さよう。だが、可哀想なジークフリードが死んだ時、私が、神の子羊たちの面倒を見ることになったのだ。ここには、あなたたちを助ける羊飼い(牧師)として、やって来た」。そう言うと、札束を取り出し、「千ドルある」と言って差し出す(1枚目の写真、矢印)〔2020年の約2万5千ドル〕。そして、「このウエストランドは子供に最も適した場所ではないと思いますぞ」と、立ち退きを勧める。そして、「この家と引き換えに千ドル。これで、あなたたちは、もっと適した場所に、自由に行くことができます」。カボンはチップのところに行き、「牧師が言ったこと聞いたか? この家を買いたいとさ」と言う。チップは、カボンを牧師から離れた場所に連れて行くと、「分んないの? あいつ、僕らをここから追い出したいんだ」と言う(2枚目の写真)。「分かるとも。この家には百ドルの値打ちしかない。なのに、千ドル出すってことは、もっと価値があるんだ」。「伯父さんは、間違ってなかった」。「じゃあ、千ドル受け取って、出て行かないことにしよう」。「そんなの、いんちきだよ」。この話し合いを受けて、カボンはチップと一緒に牧師の前に行き、「所有者は、売りたくないそうです」と言って、お金を返す(3枚目の写真、矢印)。それを聞いた牧師は、「残念ですな。慈善行為のつもりできたのですが。拒絶された。これからは、神の摂理に任せるしかありませんな」と、脅しの文句を言って出て行く。カボンは、「何だか分かるか? この家の下に何があるか、俺たちで見つけないといかんってことだ」とチップに言う(4枚目の写真)。




牧師の格好をした悪徳保安官は、今度は、ソニーの部屋を訪れる。ソニーは、牧師を探していたので、この訪問は両者にとって実にぴったりだった。保安官&牧師で、この町最大の悪人は、ソニーに、ウエストランドから “カボンという雑草” を取り除く手数料として、ソニーにお金を渡そうとする(1枚目の写真、矢印)。ソニーは牧師がカボンを妹と結婚させてくれたら、即座にカボンを殺すから、お金が要らないと言い、牧師は、「何と聖なる言葉」と祝福する(2枚目の写真)。ソニーは、①数日待つ必要がある、②それまでにカボンに何かあっては困ると条件を付ける。


次の日、カボンとチップは、白馬に乗って町に入って行く。すると、昨日、土を食べていた男が、聴衆の真ん中に立って、「あんたたちの土地のバケツ一杯の土に2ドル〔2020年の約50ドル〕払うよ」と叫んでいる(1枚目の写真)。カボンは、「また、食うのかい?」と声をかける。「ああ、それがどうした?」。「どんな味がするんだ?」。「それが仕事なんだ」。そう言うと、また、「バケツ1杯2ドル」と、声をはり上げる。チップは、それを楽しそうに見ている(2枚目の写真)。カボンは酒場の前に白馬を繋ぐ。馬から降ろされたチップは、「ねえ、あの人、嘘付いてるよ。どうしてかな?」と、カボンに訊く。カボンは、「この町には、奇妙なことが2つある。あの、土のバケツと、俺たちを大金で追い払おうとする保安官だ。少し調べてみた方がいいな。来い、チップ」と言うと、一緒に酒場に入って行く。酒場の舞台では、ソニーの女性達が客の前で踊っている。カボンは、メアリーは嫌いなくせに、女性達とは仲が良く、踊り終わった女性達がカボンに親しげに抱き着く。カボンはチップをカウンターの上に座らせると、女性のうちの1人を傍らに連れて行き、「なあ、あんたソニーには話したよな… メアリーがあんた部屋に忍び込んだ時、俺はあんただと勘違いしたってこと」と言い〔つまり、カボンはメアリーにキスか、それ以上のことをした〕、女性は、「もちろん、話したわよ。誰でも知ってる、ソニーもね。でも、勘違いだろうが、彼にはどっちだっていい、こんな不祥事〔キス以上の行為〕、許せないのよ」。「どうかしとる」。「いいえ、ソニーは正しいわ。兄として、妹の名誉を守る義務があるのよ」〔これで、なぜソニーがカボンを、メアリーと結婚させた後に殺そうとしている理由が判明する〕。女性達が去ると、カボンはカウンターに行き、チップに、“井戸の家” まで行き、土をバケツに入れて持って来て、外のキチガイに売るよう指図すると(3枚目の写真)、店の主人に情報に詳しい人を聞く。主人は、2階にいる未亡人を推薦する。カボンは、2階に行き、怪力で室内のものを “うっかり” 壊しながら、それとなく保安官&牧師のことを訊いてみる。すると、未亡人は、その男、フランシスコは、保安官&牧師&判事だと言い、ただし、彼女を遠ざけているので情報は何もないと話す。カボンが、「ここウエストランドには、そのフランシスコとやらが興味津々の物があるに違いない」と言うと、何も知らない未亡人は、自分の推量で、「金(ゴールド)」だと言ってしまい、それがカボンに先入観を与える。話が終わると未亡人はカボンをベッドに誘い、カボンは、未亡人に兄がいないことを確かめた上で、ベッドにドスンと横になると、重みでベッドが破壊される。



チップは、往復6.4キロを、帰路は両手に土の入ったバケツを持って走ってくる(1枚目の写真、矢印)。酒場の前で、今や悪漢と分かった “保安官の2人の手下” が、カボンの白馬の周りでウロウロしているのを不審な顔で見てから、店の前にできた長い “バケツの列” に並ぶ。チップがいなくなると、悪漢2人は白馬を盗んでいく。店の中では、テーブルに腰かけた例の男が、木のバケツに入った土を食べてみて、「ダメだ。土の味しかしない」とバケツを返している。待たされるのが嫌になったチップは、試食中の男の次に割り込む。今度の土は、変人を満足させたので、名前を聞き、それを紙に書き、棒にはさんでバケツに突っ込んで保管し、2ドル払う。次にチップがバケツを2個持ち上げると、「1個でいいんだ」と言い、試食。変人の目が大きく見開き、「素晴らしい。最高だ」と言い、早速、名前と住所を訊き、チップは嬉しそうに答える(2枚目の写真)。そこに、ジェームズがボスの “ならず者の一団” が入って来ると、並んでいた人々が持っていたバケツを奪って土を床にまき散らす。そして、変人に 「この詐欺師めが」といちゃもんを付ける。「俺は、騙してなんかおらん」。その時、酒場を見下ろす2階の通路から、カボンが、「おい、お前。俺は、老人や子供を虐める奴は大嫌いなんだ」と警告する。ジェームズは、相手を識別できていないので、「そうかよ。ならでかい奴から始めようか」と言い、手下が笑う。カボンは、階段をゆっくり下りてくると、ジェームズはカボンの顔を殴るが、カボンはびくともせず、ゆっくりと眼鏡をかける。これで、ジェームズは、相手が誰だか分かる。そして、カボンは、最初の時のように、ジェームスの頭を真上から一撃、ジェームズは、また後ろに倒れる、それを見たチップは、「やっちゃえ!」と大喜び(3枚目の写真)。そこから、カボン対手下どもとの戦いが始まるが、悪党どもは次々に吹っ飛ばされていく〔パワーの差は10倍〕



終盤になって意識が戻ったジェームズが、ナイフを取り出すと〔銃は、酒場に入る時、全員が取り上げられていた〕、店に入って来たフランシスコが、銃でナイフを撃ち飛ばす〔先のソニーとの話し合いで、②それまでにカボンに何かあっては困る、と条件が付けられていた〕。そして、妙に愛想よく2人を店の外まで送って行き、「可愛い坊や」と チップの頭を撫でる(1枚目の写真)。しかし、カボンが目を外に向けると、繋いでおいた白馬がいない。「俺の馬はどこだ」。チップは、店に入る前に見たので、「さっき、あの人の部下が、ここにいたよ」と教える。それを聞いたフランシスコは、騙すことができないので、「単なる予防策ですよ」と本音を言う。「どういうことだ?」。「数日は、ウエストランドにいてもらわないと」。「俺を、追い出したかったんじゃないのか?」。「銀行での乱闘の苦情、今の酒場でも。あんたを牢屋に入れてもいいんですよ。だが、あんたはいい人だ。だから、自宅軟禁ってことにしましょう」。馬がいないので、カボンはチップを肩に乗せて家まで連れて行く(2枚目の写真)。チップが、「馬がいないのに、どうするの?」と訊くと、「すごく簡単だ。鉄道があるだろ。2本も。お前さんの伯父さんがそう言った」と答える。「そうだね」。「悪いが、俺はここを出て行かないと。お前さんなら 一人で何でもやれる。小さいが もう男だ」。家に帰り、夕食を作りながら、カボンは話を続ける。「みんないい人ばかりだ。あの保安官ですら変わった。誰も、お前さんには手を出さん」(3枚目の写真)。「あなたが 出て行かないといけないのは分かるよ。でないと、あなたの義兄がいつか回復した時、大変なことになるから」〔義兄になるには、カボンがメアリーと結婚する必要がある〕。「俺には、義兄なんかおらん。言葉に注意しろ」。「ごめんなさい」。



食事をしながら、チップは 「あなたは、メアリーのこと好き?」と訊いてみる(1枚目の写真)。カボンは、「もちろん、好きだとも」という、意外な返事。「じゃあ、なぜ 結婚しないの?」。「口を閉じとけ」。「口を閉じたら、食べられないよ」。うるさいチップを黙らせようと、カボンは得意の賭けを持ち出す。「勝ったら、好きなだけ話していいぞ。負けたら、明日の朝まで黙ってるんだ」。「いいよ」。そして、食べ物の入った鍋を手に取ると、周囲と深さのどっちが長いか訊くが、チップは 「3.14×直径だよ」と、カボンをやっつける(2枚目の写真、矢印)。しかし、その先は、「もう話さないよ。ベッドに行くから」と言い、カボンの頬にキスして寝室に行く。そんなことをされたことのないカボンは、しばらくして、すやすやと眠っているチップの様子を見に行き、布団をちゃんと掛けてやる(3枚目の写真)。



翌朝、カボンが家の外にいると、保安官の手下を含めた4人が白馬を牽いてやって来る。カボンが、馬を返してくれたことを感謝すると、4人が一斉に拳銃を向ける。次の場面では、ロープを体に10本くらい巻き付けられたカボンが町の教会に連れて来られていて、さっきの4人が後ろで見張り、チップも一緒にいる。そこに、ウエディングドレスを着たメアリーが、ソニー、悪の牧師と一緒に入って来る。メアリーは、カボンのひどい姿を見て、「なぜ、サラミみたいに縛られてるの?」とカボンに訊く(1枚目の写真)。フランスシコが、「これには、些細な誤解が」と嘘で誤魔化そうとすると、チップが立ち上がり 「あんたが命じたんじゃないか!」と事実をバラす(2枚目の写真)。フランスシコは 「子供たちときたら」と取り合わず、「私たちは、ここに、メアリー・ブロンストン嬢と、カボン氏の結婚式を行うために集いました」と式を始めてしまう。ソニーが、さっそく結婚許可証を取り出して渡す。フランスシコ: 「メアリー・ブロンストンさん、結婚を望みますか、この…」。フランスシコが名前を言う前に、メアリーは 「はい、もちろん」と答える。「そして、カボン・トンプソンさん。あなたはメアリー・ブロンストンさんを妻としますか?」。カボンが黙っているので、手下の1人がチップをつかみ上げる。この脅迫を見て、カボンは 「はい」と答える。フランスシコが2人の夫婦を宣言すると、ソニーは、それ以上のキリスト教の儀式は中断させ、すぐに拳銃を取り出す。メアリーは、「何なのよ、式を続けたいわ」と反対するが、ソニーは、「もう十分だと言ったんだ。奴のロープを解け」と、妹と、部下に言う。「ソニー、お願いだから止めて。彼は、私の夫なのよ。怨恨と復讐なんか忘れなさいよ」。ソニーは、メアリーをチップの方に突き放す。すると、チップは、メアリーの袖を引っ張り、指で合図する(3枚目の写真)。メアリーが屈んでチップの口元に耳を近づけると、チップは何事か囁く。ソニーは、ロープを解いたカボンに、銃を渡す〔銃と銃で決闘〕。カボンが 「頑張れよ、チップ」と言って出て行くと、チップは、ソニーの服を引っ張って、「ねえ、ちょっと」と呼び止める。「何の用だ?」。「あなたは、彼を殺せないよ」。「そうなのか?」。「そうだよ。カボンは今や、あなたの妹の夫というだけじゃないんだ。あなたの甥の父親だよ」(4枚目の写真)。この奇妙な言葉を、ソニーが理解するのに少し時間がかかる。しかし、その可能性に気付くと、チップに 「どの甥っ子だ?」と訊き、チプはニコニコしながら、「妹さんは、赤ちゃんを待ち望んでます」と言い、それを聞いたソニーは、思わず咽(むせ)てしまう。「本当なのか、メアリー」。メアリーは 「そうよ、ソニー」と、チップに示唆されたように〔これしか助ける途はない〕、嘘を付く。ソニーがちっとも来ないので、カボンは 「すぐ俺を殺すのか? あとにするのか?」と訊きに来る。「今、殺すことはできん、この穢れた豚野郎め」。この言葉に、今度は フランスシコが 話しが違うと文句を言うが、ソニーは、この悪漢の顔に一発食らわせて “約束” を反故にする。そして、カボンに対しては、“一生忘れないようなお仕置き” をすると言って殴りかかるが、喧嘩でカボンに勝る者はいないので、納屋の藁の山の中にぶち込まれる 。




カボンは、メアリーと一緒に暮らすことなど金輪際ご免なので、鉄道で逃げようと駅に駆け付ける。そこで、汽車の到来を告げる鈴を鳴らしている男がいたので、「いつ、来るんだ?」と訊くと、「来ない」という返事。「なら、なぜ鳴らしとる?」。男は酒瓶を持って笑って鳴らし始めるので、酔っ払っているだけ。駅には他に誰もいない。カボンはもう一度酔っ払いのところに行き、「次の列車はいつ来る?」と訊く。「どっちだい? 西か?」。男は カボンに、レールの西の端を見せる(1枚目の写真)。「東は?」。そちら側のレールも途切れていた。酔っ払いの話では、ライバル2社が鉄道を敷こうとしたが、それぞれ別の党の支援を得ていたため、結局できなかったとか。家に戻ると、そこでは、ソニーとメアリーとチップが夕食を食べていた。そこに入って行ったカボンは、チップを睨みつけ、「2つの鉄道だと? お前の伯父さんは、そう言ったぞ」(2枚目の写真)「間違ったことのない爺さんがな。お前も知ってたんだろ。鉄道なんかないって」と責める。チップは、そんなこと知っているハズはないので、「ほんとになかったの?」とカボンを疑う(3枚目の写真)〔駅の映像には、4枚目の写真のようにどこかに延びて行くレール(矢印)も映っていた。だから、酔っ払いの言葉は間違っていたのかも〕




そのあと、立ったまま食卓の上の肉を食べ始めたカボンを見て、メアリーは、「それが、食事の作法? 礼儀正しく、座って食べようとは思わないの?」と批判する。カボンは、イスに座ると、「メアリー、あんたはもう結婚しとる。だから、もう 噂話の対象にはならん。だから、好きなように食べさせてくれ」。「豚みたいに?」。「そうだ! 豚みたいにだ!」。ここからメアリーの撃が始まり、最後には、メアリーは寝室に閉じ籠る〔チップの家が、いつから、カボン夫妻の家になったのだろう?〕。うんざり顔のカボンが、「なぜ俺を殺さん?」とソニーに訊くと、「お前が苦しむのを見たい。心配するな、ちゃんと殺してやる。彼が、21歳になったらな」(1枚目の写真)。「誰が?」。「俺の甥っ子」。「どの甥?」。チップは、メアリーの方を指差した後で、妊婦のようにお腹が膨らんでいるよう、手で示し(2枚目の写真)、「甥だよ」と言う。「誰の甥だ?」。ソニー:「ソニー伯父さんのだ」。ここまで来て、カボンは、ようやく自分が殺されずに済んだ理由が分かる。一方、フランシスコの2人の手下は、“土喰い男” の小屋を、板の隙間から覗いている。中では、2ドル払った土のバケツから、サンプルを取ってきては、何かの液体を振りかけ、それを傍らの鍋の中に入れ、何も起きないのでがっかりし、次のバケツに移る。次に男がつかんだバケツには、「チップ・アンダーソンの名前が書いてある。男が同じ処理をして鍋の中に入れると、一気に燃え上がる。それを見た男は、もう一度、バケツに挿してあった紙を見る(3枚目の写真、矢印)。男は、そのまま小屋を出ると、チップの家に向かって走って行く。一方、盗み見をしていた手下どもは、フランシスコに報告に行く。



男が “井戸の家” のドアをしつこくノックしていると、起こされたチップが寝間着のままドアを開ける。「おお、また会えた」。「何の用?」。「お早う、わが友よ。入ってもいいかな?」。「また、土が欲しいの?」。「まあ、ある意味では…」。男は中に入ると、①この町に定住したい、②チップの美しい家を見つけた(1枚目の写真)、③貧しい老人だが、残された日々をこうした平和な場所で暮らしたいと、相手が子供なので 安く売らせようと同情を誘う言葉を並べる。そこに、2階からカボンが下りて来る。「坊やの親戚?」。「ううん、相棒」。相手が怖そうな男になったので、「この家を買いたいと思いますが、5千〔2020年の約12万5千ドル〕ではどうですか?」と訊いてみる。カボンは、その金額に驚く。「あんた、この辺で何か探してるのかね?」。「何も。ただ、平和で静かだから」(2枚目の写真)。それを聞いたカボンは、「確かにな。お前さんの伯父さんは正しかった」と 笑顔でチップに言う。「運が開けるぞ。5千ドルもくれるんだ」。しかし、カボンより賢いチップは、「この家、売り出してなんかないよ」と反対する(3枚目の写真)。所有者がそう言うので、カボンは、ニコニコ顔はやめ、「俺の相棒は、売り出してないと言った」と断る。男は、「聞こえました。売る気はないと。でも、私も、大きな犠牲を払いましょう。もう二度と言いませんが、死んだつもりで、1万〔2020年の25万ドル≒2020年の2700万円〕ではどうですか」。それを聞いたカボンは狂喜するが(4枚目の写真)、チップは厳しい顔で首を横に振る(5枚目の写真)。





男が帰った後で、カボンは井戸の水をもう一度汲み上げ、井戸水を平たい金属皿に空け、砂金でもないかと見てみるが、何も見つからない(1枚目の写真)。そこに、フランシスコから指令を受けたジェームズが現われ、「男なら、これで守れ」と言って、2丁持って来た銃の一方を カボンの足元に投げる。カボンは、「お前がまた忘れちまったのなら、思い出させてやるぞ」と言うが、銃は拾わない。それを、家から出て来たソニーが見ている。ジェームズは 「銃を取れ。10まで数える」というと、カウントアップを始める。9までいっても、カボンが銃を拾わないので、9と半、9と3/4の1と細かくしていく。一方、チップはソニーに助けてもらおうと頼むが、彼の要求は「“井戸の家” の1/3」。チップは、「1/3? この大泥棒」と言うが、それで、認めたことになるのだろう。「9と3/4の3」(2枚目の写真)。ソニーは。「お前、うるさいぞ」と言って立ち上がる。「鼻を突っ込むな」。「俺の鼻は長くないんでね」。そして、持っていたビール瓶を投げ上げ、ジェームズが拳銃を取り出すと、その前に、素早く銃を抜いてジェームズのズボンのボタンを撃ち、ズボンが下がる。情けないジェームズは、ズボンを手で持って逃げ去る(3枚目の写真、矢印)。



一方、酒場では、相変わらず、ソニーの女性達が踊っている。そこに、ジェームズが入って来ると、フランシスコの前に行く(1枚目の写真)。フランシスコが、「カボン?」と訊くと、ジェームズは 「ソニー」と答える。それを聞いた保安官は、バッジを外すと、「あの2人の野郎に、見せしめてやる」と言い、バッジを床に投げつける。そして、店にいた凶悪犯どもを集めて何事かを命じる(2枚目の写真)。一方、女性達は、ソニーの名前が出たので、これは一大事とばかりに、入店時に武器を預かった部屋に入って行き(3枚目の写真)、銃に細工をする。



“井戸の家” では、町の人々を呼んで、結婚披露のパーティが行われている。カボンはメアリーと踊りながら、「足をどこに動かしていいかも分からん。なんで、俺にダンスなんかさせるんだ」とブツブツ。メアリーは、「夫と踊れて、とっても幸せだわ」(1枚目の写真)「ほら、そんなに口を尖らせないで。あなただって嬉しいんでしょ。もっと楽しまないと」と言う。「俺が、あんたなら、そんなに騒がないぞ。赤ちゃんを生むんだろ」。この言葉で、メアリーは踊るのを止める。そのあと、チップが同じ年頃の少女と踊っている短い場面があり、それを見たカボンは、「お前さんも、縛られて一生を送ることになるぞ」と笑顔で言う。それを聞いたメアリーは、「チップ、カボンの言うことなんか気にしちゃだめよ。彼はいつもブツブツ言ってるけど、年取った熊のように幸せで満足してるんだから」と言った後で、「私が心配しているのは、私が妊娠してないって彼が知った時、ひと騒動起きるんじゃないかってことなの」と打ち明ける。チップは、「でも、遅かれ早かれ、結婚した女の人には、赤ちゃんができるよ」と言って、メアリーを安心させる(2枚目の写真)。すると、楽しい会場に、武装した20名ほどの男達が突然姿を現わす(3枚目の写真)。



女性達と子供達は家の中に避難し、男性だけが屋外に残る。フランシスコと2人の手下は、カボンとソニーの前に来ると、手下に 「2人とも殺せ」と命じる。しかし、撃った銃は不発。他の男達も2人に向かって撃つが、いずれも不発。弾は出なくても、火花だけは出るので、それが、パーティ用にしつらえた柱の上の回転花火に点火し、恐れをなした襲撃団の馬が逃げ出す。カボンは、ゆっくりと上着を脱ぎ、肉弾戦に備える。最初にやっつけたのが、弱いくせに威張ってばかりいる極悪人のフランシスコ。ワン・パターンの頭叩きだ(1枚目の写真)。その直後、回転花火の1つが井戸に飛び込み、中の石油に火が点き、爆発する(2枚目の写真)。そこから先は、この映画の中で一番派手な肉弾戦。カボンに勝てる者はいなく、全員がやられるか逃げるかのどちらか。火が消えた後の井戸から噴き出した原油に、“土を買って食べた男” は、チップを抱いたカボンに、「何て運がいいんだ。あんたたちは、億万長者だ」と声をかける(3枚目の写真)。「俺が何を探してたか分っただろ。石油さ」。



平和が戻ると、メアリーが家から出てきて、絶え間なく怒鳴り続ける。「何てことしたのよ、この悪党! 恥知らず! 超鈍感! あなたは、私のパーティを滅茶苦茶にした! 他の人みたいに殴れないの? あなたが戦い始めると、何もかもぶっ壊すんだから! あの呪われた眼鏡のせいね。いつもその服。まるでバッファローと同じ。愚かで鈍い」。悪口は際限なく続く。「なんて惨状なの? 私一人でどうやって片付けるの? 教えなさいよ。それに、その井戸に蓋をして〔彼女は、石油のことも眼中にない。ただの泥水だと思っている〕。私、感情のない怪物と結婚しちゃった」(1枚目の写真)〔メアリーも、文句しか言わない怪物だと思うが…〕。その罵倒癖に閉口したのか、ソニーはやって来た馬車に乗ってさっさと引き上げる。「さよなら、カボン、楽しめよ」と手を振って(2枚目の写真)。 メアリーの文句はさらに続き、最後に、「怪物と結婚したんだわ!」と、同じようなことを言って、家の中に消える。カボンは、チップに、「あの女が、赤ちゃんを待ち望んでないんなら…」と、悔しさを滲ませる。すると、チップは、これまで秘密にしてきたことを打ち明ける。「それ、本当じゃない。ソニーのために作り上げたんだ」(3枚目の写真)。それを聞いたカボンは、チップを地面に降ろし、眼鏡を取りだしてかける。それを見たチップは、「そんなこと、しちゃいけないよ」と止めるが、「息子よ。やらないといけないんだ」と言うと、家の中に入って行く。すると、中から、メアリーの悲鳴が聞こえてくる。「カボン、だめよ! 眼鏡なんかかけて!」。何かが割れる音。「二度としないと誓うわ!」。大きな物が壊れる音。「愛してるわ。私、あなたの妻なのよ!」。何かが割れる。「そうだ!」。その言葉とともに、大きな家が揺れる。それを見て、チップが笑顔になったところで映画は終わる 〔結局、いったいどうなったのだろう??〕




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